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「たかが満ち足りた世界」

「たかが満ち足りた世界」とは、GRAPEVINEの「Glare」という曲の一節である。この表現は、一見矛盾しているようにも思える。満たされているはずの世界に対して、「たかが」と断じるその姿勢は、現代社会に対する反抗のようにも捉えられる。しかし、あえて視点を変えて解釈すると、この言葉には、満たされているように見える現実の中に、なお埋めきれない空白や渇望を感じる人間の心理が垣間見える。たとえ個々の意味合いは異なるにしても、それぞれが抱える未知への憧れや可能性への熱い思いを象徴しているのではないだろうか。

曲の後半では、現実の制約を超えようとする意志がより明白となる。「実態の無い世界なら」という言葉は、既存の枠組みに囚われない自由な想像力と、可能性への憧れだろうか。街が立体化し、空に届き、月が弧を描くという描写は、人間の内なる可能性が既存の境界を超えていく様を象徴しているようだ。その光景は、我々が心の奥底で描く理想や夢そのものを物語っている。

そして、最後に現れる「照らしているだけの光」。この光は、ただ静かにそこにありながら、走り出そうとする者の背中をそっと押し、心に勇気を灯す存在でもある。その光は、他者を支え、見守り続ける静かな温もりと希望そのものだろう。

来年もまた、「たかが満ち足りた世界」として迎えたい。この言葉が持つ意味を胸に、未知なる可能性と光を追い求めながら。

たかが満ち足りた世界で
胸がいっぱいになって
ほらもう行かなきゃ
走り出したって
待っててあげるさ

「Glare」作詞 田中和将