時間が「早く感じる日」と「遅く感じる日」のちがいは?
こんにちは。東京駅近くの心療内科・メディカルクリニックルナ東京です。
今日は「時間の流れの感じ方」について、脳と心の視点からお話ししてみたいと思います。
◆「え、もうこんな時間?」の正体
夢中になっていると、1時間があっという間に感じられる。
反対に、苦手な会議や不安な時間は、1分がとても長く感じられる。
このような「時間の伸び縮み」は、単なる気分の問題ではなく、脳の中の“体内時計”が実際に変調している現象です。
近年の神経科学では、この時間感覚には大きく3つの鍵があることがわかってきました。
1. 注意の向きが、時間を変える
好きなことに没頭しているとき、脳は「今何分たったか?」という情報をあまり処理しません。
これは、時間をモニターする前頭頭頂ネットワークの働きが抑えられ、代わりに集中タスクにリソースが割かれるからです。
一方、不安や退屈な時間では注意が「自分の内側」に向かいやすく、呼吸や心拍の微細な変化を敏感に感じやすくなります。
この結果「まだ5分しかたっていないのか…」という感覚になりやすいのです。
2. ドーパミンと「脳内時計」の関係
快感や達成感を感じたとき、脳内では報酬系ホルモン「ドーパミン」が急上昇します。
このとき、脳内時計のテンポも速まり、短い時間でも「もう終わったの?」と感じやすくなります。
反対に、緊張や不安でドーパミンの分泌が低下すると、時間の流れがスローモーションに。
これは、不安障害やストレスによる「時間が遅く感じる」現象の一因とも言われています。
3. 「内受容感覚」で時間を感じ取る力が変わる
内受容感覚(インターオセプション)とは、心拍や呼吸、腸の動きなど、自分の身体内部の感覚を感じ取る力のこと。
この感覚に優れている人ほど「今何秒経ったか?」という見積もりが正確だという研究もあります。
ヨガや瞑想、深い呼吸法などを続けると、この内受容感覚が鍛えられ、自律神経のバランスが整っていきます。
結果として、感情や時間の流れにも「ゆとり」が生まれやすくなるのです。
◆生活習慣が「脳内時計」を整える
たとえば最近「1日がゆったり感じられるようになった」という方は、もしかしたら以下のような生活改善が関係しているかもしれません。
食事内容を整えた、質の良い睡眠がとれるようになった 呼吸や姿勢を意識する時間を作るようになった 楽しめる趣味に没頭する時間をとった
これらの積み重ねが「脳内時計=体感時間」にも好影響を与えています。
◆不安で時間が重く感じるときこそ
当院では、不安やストレスにより「時間が長く感じてつらい」「集中できない」といったご相談をよくいただきます。
体感時間の乱れは、メンタル不調の「気づきのサイン」のひとつでもあります。
脳の仕組みと向き合いながら、ほんの少し呼吸を整えたり、体に意識を向けるだけでも、日常は少しずつ変わっていきます。
◆まとめ
集中していると、脳は時間の流れを「速く」感じる 不安やストレスがあると、時間が「遅く」感じやすい ドーパミンや内受容感覚が、時間感覚に影響している 食事・睡眠・呼吸・趣味が「脳内時計」を整える鍵に
東京駅・銀座線京橋駅・浅草線宝町駅エリアで、心のケアをご希望の方へ
当院では、不安・パニック・集中力低下などの症状に対して、薬物療法と生活習慣からのアプローチを行っています。
心と時間の「ズレ」を感じたときは、ぜひ一度ご相談ください。
執筆;精神科専門医