社交不安について調べていくと「治療といっても何をするのだろう」「薬を飲まないといけないのだろうか」と不安になる方も少なくありません。
社交不安の治療は、無理に不安をなくすことや、性格を変えることが目的ではありません。
ここでは、心療内科で行われる治療や、社交不安との向き合い方についてわかりやすくお伝えします。
社交不安の治療の考え方
社交不安の治療で大切にするのは、不安があっても行動できるようになること、不安に振り回されにくくなること、そして生活の幅を少しずつ取り戻すことです。
「人前でまったく緊張しなくなる」ことを目標にすると、かえって不安を強めてしまうことがあります。不安があっても大丈夫、と思える感覚を育てていくこと——これが治療の大きな方向性になります。
心療内科でまず行うこと
初診では、いきなり治療を始めるのではなく、まずお話を聞かせていただきます。どのような場面で不安が強くなるか、いつ頃から続いているか、生活や仕事・人間関係への影響、これまでどのように対処してきたか——そうしたことを丁寧にお伺いします。
うまく説明できなくても問題ありません。「話すのが苦手」「緊張してしまう」ということ自体も、大切な情報です。
薬を使う治療について
社交不安の治療では、症状の程度や生活への影響に応じて薬を使うことがあります。薬は、不安や緊張の強さを和らげたり、人前の場面での身体反応を軽くしたりする目的で使われます。
ただし、必ず薬を使わなければならないわけではありません。症状が軽い場合や、生活の工夫だけで対応できる場合には、薬を使わずに経過を見ることもあります。
「一度飲み始めたらやめられないのでは」と心配される方もいますが、必要な期間だけ使い、状態に応じて調整していくケースも多くあります。
薬以外の治療・サポート
社交不安の治療では、薬だけでなく、不安が強まる考え方の整理、人前の場面での対処の仕方を知ること、不安を避けすぎない生活の工夫といったサポートも重要です。
「緊張してはいけない」「失敗してはいけない」と思うほど、体は強く反応してしまいます。不安を敵にせず、不安があってもやり過ごせる経験を少しずつ積むことが、回復につながることがあります。
治療期間について
社交不安の治療期間は、人によってさまざまです。比較的短期間で楽になる方もいれば、波を繰り返しながらゆっくり安定していく方もいます。どちらも珍しくありません。
「早く治らなければ」と自分を追い込む必要はありません。治療は、あなたのペースで進めていくものです。
心療内科を受診する意味
心療内科は「症状が重くなってから行く場所」ではありません。今の状態を整理したい、自分の不安がどの程度なのか知りたい、これからどう向き合えばいいか相談したい——そのような理由で受診される方も多くいらっしゃいます。
一度相談することで、「思っていたより安心できた」「一人で抱えなくてよかった」と感じられることもあります。
最後に
社交不安の治療は「頑張って克服する」ことではありません。
不安がある自分を否定せず、少しずつ行動の選択肢を増やしていくこと。その過程を、専門家と一緒に考えていくこと。それが治療の本質です。
あなたの不安の形やペースに合った方法は、必ずあります。無理のない形で、一歩ずつ進んでいきましょう。
突然の強い不安や身体症状が出る場合には、
パニック障害の治療と共通する考え方が役立つこともあります。
