動悸、息苦しさ、めまい、不安…病院に行っても「異常なし」と言われる。そんなつらさに「名前」がつくとしたら、それは「パニック障害」かもしれません。東京駅近くの心療内科「メディカルクリニックルナ東京」では、こうした、理由のない不安の正体と、脳と体の関係について、やさしく解説しています。
はじめに
突然、心臓が激しく脈打ち、息ができなくなる。
世界が歪み、自分が消えてしまいそうな感覚に襲われる。
それは、何かの身体の病気ではなく「パニック発作」かもしれません。
この記事では、パニック障害について、その主観的な体験、生理的なメカニズム、治療法、そして予防のヒントまでをわかりやすくご紹介します。
パニック発作とは|主観的な恐怖のリアリティ
パニック発作は、単なる「不安」ではありません。
実際の体験者は、以下のように語ります。
「身体がコルセットで締め付けられるような感覚」
「過去・現在・未来が一気に襲ってくるような圧迫感」
「重力のないブランコで宙に投げ出されるような恐怖」
「世界の輪郭がぼやけて、自分の存在が曖昧になる」
多くの人が「心臓発作」や「脳卒中」と勘違いするほどの衝撃を受ける症状です。
パニック発作の仕組み|誤作動した防衛本能
パニック発作は、「危険を察知したときの正常な生理反応が、誤って過剰に作動する状態」と考えられています。
具体的な流れは以下の通りです。
扁桃体が危険を検知
交感神経が活性化し、アドレナリンが分泌
心拍数と呼吸数が急上昇、過呼吸・動悸が起こる
脳や手足への血流の変化により、ふらつきやしびれが出る
通常、発作は10分以内にピークを迎え、徐々に鎮まっていきます。
なぜパニック発作が起こるのか?
はっきりした原因は解明されていませんが、以下のような「きっかけ」が引き金になることがあります。
過去のトラウマ体験を思い出すような状況
極度のストレスや睡眠不足
カフェインやアルコールの摂取
心身の疲労蓄積
また、PTSDや社会不安障害、強迫性障害、全般性不安障害などの他の不安障害と重なる場合もあります。
パニック障害とは|診断される条件
以下のいずれか、もしくは複数に当てはまる場合、パニック障害と診断されることがあります。
パニック発作が繰り返し起こる
次の発作に対する強い不安(予期不安)がある
発作を避けるための行動制限(回避)が目立つ
発作自体は身体に大きな害を及ぼすものではありませんが「また起こるかも…」という不安が生活を大きく制限してしまうことがあります。
治療法|薬物療法が有効(薬物療法に消極的な方は心理士によるアドバイスを)
① 薬物療法(主に抗うつ薬)
SSRIを中心とした抗うつ薬は、パニック障害の予期不安や発作の頻度を軽減するのに効果的です。
服薬は医師の管理のもとで行い、効果が出るまでには数週間~数ヶ月かかることがあります。
② 認知行動療法(CBT)
CBTの目的は、発作自体をなくすのではなく「発作への反応を変えること」です。
主なステップは以下の通りです。
パニックの仕組みの理解
正しい呼吸法(例:ボックス呼吸)
認知再構成法(「このまま死ぬかも」という考えを見直す)
暴露療法(避けていた状況に段階的に慣れる)
暴露療法は、「この感覚=危険」という誤解を経験的に修正していくための実践です。
当院では、呼吸法や暴露療法のアドバイスを行っておりますが、心理士によるとされる認知行動療法は行っていません。
薬物療法に消極的な方は、心理士の在籍するクリニックへご相談下さい。
予防とセルフケア|まずは、知ることから
「不安はあなたを傷つけない。でも、押し込めると発作になる」
この考え方が、多くの患者さんにとっての救いになっています。
自分の症状に名前がつくだけでも安心感が得られるという声は少なくありません。
自宅でできる予防法:
毎日3分の呼吸トレーニング
睡眠と食事のリズムを整える
カフェインやアルコールの摂取量を見直す
日記をつけて「感情の出口」を持つ
信頼できる人に気持ちを共有する
おわりに|パニック発作は「治す」より「付き合っていく」
パニック障害は、正しい理解と支援があれば、大きく改善することができます。
もし繰り返し発作に悩んでいるなら、心療内科や精神科、心理士によるサポートを一度検討してみてください。
あなたの不安は、あなたを壊すものではありません。
ただ、放っておかないであげてください。
執筆;精神科専門医
【監修】 メディカルクリニックルナ東京