ビジネスパーソンに急増中のメンタル不調とは?

夜のオフィスで一人仕事を続けるビジネスパーソン。デスクには減少傾向のグラフが映るモニターと書類。都市の夜景を背に、疲れた表情で残業する姿が、在宅勤務やメンタル不調のテーマと重なる。

働く人の約10人に1人が抱える「見えない心の不調」

最近、「なんとなくやる気が出ない」「朝起きるのがつらい」と感じることはありませんか?

厚生労働省や関連機関の調査によれば、日本のビジネスパーソンの7~8%が精神疾患を経験しているとされています。その中でも特に「うつ病」や「適応障害」などは、見過ごされやすく、我慢して仕事を続けてしまう方も少なくありません。

テレワークで1日4000歩減少?身体と心への影響とは

在宅勤務の普及により、私たちの働き方と生活習慣は大きく変化しました。

明治安田体力医学研究所が実施した「MYLSスタディ」によると、在宅勤務の頻度が高いほど、身体活動量は減少し、座っている時間は長くなることが明らかになっています。

特に、週5日以上在宅勤務をしている人は、まったく在宅勤務をしていない人に比べて、1日の平均歩数が約4,000歩少なく、座位時間が約70分長いという結果が報告されています。

さらに注目すべきは、週1〜2日など少ない頻度で在宅勤務をしている場合でも、非実施者と比較してすでに活動量が少なく、座位時間が長い傾向があるという点です。これは、在宅勤務の導入そのものが、運動量の低下とメンタル不調のリスクを高める可能性があることを示唆しています。

歩行や軽い運動は、セロトニン(精神を安定させる神経伝達物質)の分泌を促します。そのため、運動不足はメンタル不調のリスクを高める要因になると考えられています。

よくあるメンタル不調の種類と特徴

うつ病

気分の落ち込み、興味の喪失、倦怠感、集中力の低下。
「最近ミスが増えた」「喜びを感じにくくなった」といった変化がサインになることも。

適応障害

人事異動や新しい職場などにうまく適応できず、不眠や不安、落ち込みなどが強く出る状態。

パニック障害

突然の動悸・息苦しさ・強い不安が繰り返し起こる。

社交不安障害(あがり症)

人前での発表や会話に強い緊張や赤面、震えなどを感じる。

メンタル不調を引き起こす主な原因とは?

運動不足とセロトニン低下

テレワークによって歩数が減ると、心身のバランスを保つセロトニンの分泌が減少し、不安や抑うつ状態を引き起こすことがあります。

睡眠不足・生活リズムの乱れ

日本人ビジネスパーソンの多くは、平日の平均睡眠時間が6時間未満とも言われています。

世界保健機関(WHO)が2020年に発表した「身体活動および座位行動ガイドライン」によれば、長時間の座位行動は、心疾患や2型糖尿病、がん、メンタルヘルスの悪化を含む様々な健康リスクと関連していることが明らかになっています。

特に、1日8時間以上の座位時間はリスクの上昇と明確に関連しており、WHOは「できるだけ座位時間を減らし、身体活動や睡眠に置き換えること」を推奨しています。

これは在宅勤務によって増加しがちな「座りっぱなしの時間」が、メンタルにも身体にも負担となり得ることを示唆しています。

長時間労働と人間関係

納期や責任の重圧、職場内のコミュニケーションの難しさも、心の不調に影響を与えます。

メンタル不調を防ぐ3つのセルフケア習慣

① 歩く習慣を意識的に増やす

通勤で1駅分歩く/昼休みに10分の散歩/スタンディングデスクの活用など、1日の歩数を少しでも増やしましょう。

② 睡眠の質を高める

  • 就寝時間・起床時間を固定する
  • 寝る前のスマホ使用を避ける
  • カフェインは午後2時まで
  • ブルーライトカットを意識

簡単なストレス対策を取り入れる

  • 深呼吸や瞑想を5分取り入れる
  • 趣味の時間を1日15分だけ確保する
  • 思考整理にジャーナリング(日記)を使う

専門家に相談すべきサインとは?

次のような状態が【2週間以上】続く場合は、医療機関の受診をご検討ください。

  • 朝起きるのがつらい/起きたくない
  • 仕事に対する意欲が出ない
  • 食欲がない/眠れない
  • 気持ちが焦る、落ち着かない
  • 体のだるさや頭痛が続く
  • ちょっとしたことで涙が出る

適切な専門家の選び方

メンタルヘルスの専門家には、精神科医、心療内科医、臨床心理士などがいます。症状や希望する治療法によって、適切な専門家は異なります。

薬物療法を希望する場合は、精神科医や心療内科医への相談が適しています。メディカルクリニックルナ東京では、精神科医による薬物療法をメインとし、それに加えて簡易的な精神療法も行っています。

特にパニック障害、社交不安障害(あがり症)、軽症うつ病、適応障害などの症状に対応しており、ビジネスパーソンの心の健康に関する様々な悩みをサポートしています。

まとめ:心の健康も「生活習慣」で守れる時代へ

テレワークによる歩数減少や生活リズムの乱れは、気づかぬうちに心の不調を引き起こすことがあります。早期のセルフケア、そして必要なときの専門医療機関への相談が、メンタル不調の予防・改善につながります。

メンタルヘルスケアは「気の持ちよう」や「性格の弱さ」の問題ではなく、脳内の神経伝達物質の乱れなど生理的な要因が関係していることが多いのです。適切な対策と必要に応じた専門家のサポートを受けることで、心の健康を守りながら充実したビジネスライフを送ることができます。

メディカルクリニックルナ東京では、パニック障害、社交不安障害、軽症うつ病などのビジネスパーソンに多いメンタル不調に対応しています。東京駅、宝町駅、京橋駅から通いやすい立地で、平日夜間・土曜診療も実施しているため、忙しいビジネスパーソンでも通院しやすい環境が整っています。メンタル不調でお悩みの方は、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。

文責 院長(医学博士、日本専門医機構認定精神科専門医、精神保健指定医)

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