なんとなく不安になる、落ち着かない、理由がないのに心がざわつく——それは「気のせい」ではありません。不安は、脳と体が発している正当なサインです。東京駅近くの心療内科「メディカルクリニックルナ東京」では、不安に振り回されず、うまくつきあうためのセルフケアを3つのステップでご紹介します。
若い世代にこそ知ってほしい、不安のリアル
「なんとなくソワソワする」「将来が不安で眠れない」——そんな気持ち、ありませんか?
世界で不安障害の有病率は約4~5%と推定されていますが、特定の地域や生涯での経験率では最大7%(14人に1人)に達するとも言われています。
それほど、身近なこころの問題です。
にもかかわらず、多くの人が「気にしすぎなだけ」「ただの弱さ」と誤解し、見過ごしてしまいます。
ですが実は、不安には「正常な不安」と「不安障害」があり、放っておくと仕事・人間関係・自己肯定感にも深刻な影響を与えることがわかっています。
このコラムでは、薬に頼るだけでなく、自分自身の力で不安を軽くするための3つの方法をご紹介します。
正常な不安と「不安障害」のちがいって?
誰でも初めて会う人の前や大事なLINEを待っているときに、ドキドキした経験があるはず。それは「正常な不安」。
私たちの脳が、危険を避けたり問題を解決したりするために働いてくれているサインです。
一方で、不安障害になると――
つねに最悪のケースを考えてしまう
理由もなく強い不安が続く
生活や仕事に支障が出る
こうした状態にまで発展します。
たとえば、「もし寝坊したらどうしよう…」と毎晩3時間以上寝つけず「心配しすぎ」とわかっていても止められない
そんな人は、不安障害の可能性も考慮する必要があります。
不安を軽くするために。大切な3つの「セルフケア力」
ケンブリッジ大学の研究では「経済的に苦しい地域に住む人ほど不安のリスクが高い」ことが示されています。
でも同時に「あるスキル」を持っている人たちは、たとえ過酷な状況でも不安を感じにくかったという結果も。
その「あるスキル」とは、次の3つのコーピングスキル(=対処する力)です。
① 完璧じゃなくていい。「下手でもやってみる力」
「不安すぎて、何も始められない」——そんなときは、「完璧を目指すのをやめること」から始めましょう。
作家G.K.チェスタートンの言葉に、
「何かをうまくやる価値は、たとえ最初は下手でもある」
というものがあります。
たとえば、友達を誘いたいけど「返信なかったらどうしよう」と悩むとき。
小さく一歩踏み出して「ちょっと下手でもOK」と思って行動すると、自己効力感(自分はできるという感覚)が高まります。
実際に「とりあえずやってみる」を習慣にした人は、
迷いが減り
決断が早くなり
不安がワクワクに変わった
という声もあります。
② 「自分に優しくなる」ことは、回復のスタートライン
不安を感じやすい人ほど、自分に厳しくなりすぎてしまう傾向があります。
「またダメだった」
「ちゃんとできなかった」
と、必要以上に自分を責めていませんか?
大切なのは、過去の自分をゆるすこと。
パニックになってうまく話せなかった日
話しかけたかったけど、できなかった場面
そんな時も「よくがんばったね」と、自分に声をかけてあげるだけで、不安は少しずつ落ち着いていきます。
自分への優しさ=回復の第一歩です。
③ 自分の「誰かのため」を見つけてみる
不安でいっぱいなとき、人は視野が狭くなりがちです。
だからこそ、「自分以外の誰か」を思い出すことが、驚くほど強い支えになります。
精神科医ヴィクトール・フランクル博士はこう語っています:
「人生に絶望する人に必要なのは、人生がその人に期待していると気づくこと」
・誰かの相談に乗る
・役立つ情報をシェアする
・未来の世代に何かを残す
そういった小さな「誰かのため」は、自分自身を支える意味に変わります。
そしてその意味こそが、不安を乗り越える原動力になるのです。
最後に:不安は「治す」ものじゃなく「育てていく」感情かもしれない
不安があるのは、弱さではありません。
むしろそれは、「よりよく生きたい」という心のサイン。
だからこそ、薬だけに頼るのではなく、
自分を動かしてみる力
自分にやさしくなる力
誰かを思う力
を育てていくことが、こころの回復にとってとても重要なのです。
そしてこの3つの力は、誰もが少しずつ、必ず育てていけるものです。
【参考】
Cambridge Neuroscience Research on Anxiety and Coping (2023)
American Psychiatric Association (APA)
Viktor Frankl, Man’s Search for Meaning
【監修】メディカルクリニックルナ東京