意志が弱いからやる気が出ないのは、本当なのか?

Burrhus Frederic Skinner

「やらなきゃいけないのに、体が動かない」「忙しいはずなのに、なぜか行動できない」──そんな自分を責めていませんか。多くの方が、こうした状態を「意志が弱いから」「自分の性格のせい」と考えがちです。

しかし、行動分析学の視点から見ると、少し違った理解ができます。

行動は「意志の力」で生まれるのではない

行動分析学(ラディカルな行動主義)の研究では、行動は内側から湧き出る「やる気」や「意志の力」によって生まれるものではないと考えます。行動は、これまでの環境や経験の積み重ねによって形づくられ、維持されるものです。

つまり「行動できない」という状態は、心が弱っているのではなく、行動が起きやすい条件が整っていない状態だといえます。

行動を続けるカギは「すぐに得られる成果」

人は、行動した直後に良い結果が得られたとき、その行動を繰り返すようになります。「将来のために頑張る」「老後のために我慢する」といった遠い報酬は、行動を引き出す力が弱いことがわかっています。

大切なのは、行動のあとに小さな達成感や安心感がすぐ得られるよう工夫することです。

「欲しい」という気持ちも環境次第

「何かをしたい」「何かが欲しい」という感覚も、実は内側から自然に湧くものではありません。その行動によって得られるものが一時的に不足しているとき、行動は強く引き出されます。

逆に、常に刺激や快楽が手に入る環境では、新しい行動は起きにくくなります。スマートフォンをだらだら見続けてしまう環境では、他の行動が生まれる余地がなくなってしまうのです。

「自分を奮い立たせる」より「環境を整える」

行動を変えるとは、気合いで自分を奮い立たせることではありません。環境を整えることです。

集中したいときは、気が散りやすいものが目に入らない場所に身を置く。飲酒を控えたいときは、意志に頼るのではなく、お酒を買わない・飲む機会そのものを減らす。このように、自分を取り巻く状況を調整することが、自己管理の基本になります。

いわゆる「無気力な状態」については、

努力しても報われない状態が続くと、行動は自然と減っていきます。一方で、成果が出るタイミングが読めなくても、適度に報われる状況では、行動は続きやすくなります。行動を維持するには、成果が得られる頻度やタイミングが適切であることが大切です。

行動できない自分を責めないでください

問題は意志の弱さではなく、環境と生活リズムにあります。

何も決めずにだらだら過ごすよりも、ある程度の時間割をつくり、行動と休息のリズムを整えること。心を鍛えようとするよりも、生活環境を整えること。それが、行動を生み出すための現実的で有効な方法です。

追記

行動分析学者スキナーの主張に基づくと「意欲(あるいは意志、動機)がないから行動しない」という説明は、因果関係の誤認であり、さらには循環論法であるとされます。

したがって「意欲がないから行動しない」のではなく「行動を強化する環境条件が整っていない(あるいは罰の条件が存在する)ために行動が起きず、その結果として意欲も感じられない」環境や随伴性を調整することが大事と行動分析学は語っています。

著しい不安症状や精神病症状が強い方にとっては負担になることもありますが、強い病気の状態ではなく、ストレスが続いて気持ちが晴れない方や、うつ病と診断されるほどではないものの、なんとなく意欲が湧かないと感じている方には以下を取り入れて良いかもしれません。

何も決めずにだらだら過ごすよりもある程度の時間割を作り行動と休息のリズムを整えることが現実的で有効な方法です。心を鍛えるよりも生活環境を整えること。それが行動科学から見た行動力の正体です。不調な時は、大きな目標ではなく、無理なく実行できる行動を時間割の中に置くことで、生活のリズムが整い、次の行動につながりやすくなることがあります。

参照:B.F.スキナーの著書『About Behaviorism』

文責 院長(医学博士、日本専門医機構認定精神科専門医、認定産業医)

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