うつ病の再発をふせぐために
〜「治ったあと」こそ、大切な時間〜
うつ病は、きちんと治療を受ければよくなりやすい病気です。けれども、いったん回復してもしばらくしてから再び症状が出てしまうことがあります。これを「再発」といいます。
うつ病は風邪のように「1回治ったらもう大丈夫」というものではありません。だからこそ「再発をふせぐこと」も、うつ病治療の大切な一部です。
再発しやすいのはどんなとき?
うつ病は人によって再発のしやすさが違います。
- 比較的軽い症状のうつ病では、一生のうち2〜3回くらいしか再発しない人もいます。
- けれども、回復しても数ヶ月でまた落ち込んでしまう「反復しやすいうつ病」や、なかなか気分が晴れずに長く続く「長びくタイプ(遷延型)」のうつ病もあります。
こうしたタイプのうつ病では、再発予防に薬の調整や生活スタイルの見直しがとても大切です。
「なりやすい性格」は変えられる?
うつ病になりやすい人の特徴
- まじめすぎる
- 完璧主義
- 人の目を気にしすぎる
- 慣れたやり方を変えたくない など
こうした性格そのものを変えることは難しいかもしれませんが、考え方のクセや行動パターンを少しずつ緩めていくことで、再発のリスクを減らせる可能性があります。
そのためには、カウンセリングや生活のアドバイスが役に立ちます。ただし、うつ病が治ると医療機関を離れてしまう方も多く、こうしたサポートを受ける機会が少ないのが現状です。
「休む」だけじゃなく「社会とつながる」ことも大切です
うつ病の急性期(つらさが強い時期)には、しっかり休むことが第一です。
しかしながら、うつ病が慢性化し長く気分が沈んだ状態が続くと、家に閉じこもっていること自体が気分の回復を妨げてしまうこともあります。
長く続くうつ状態(遷延型)に対して
そういった場合には、以下のような「社会とのつながり」が助けになることもあります
- 気軽なスポーツや趣味を始めてみる
- 責任の少ない作業・家事などを少しずつ始める
- 理解のある職場でリハビリ出勤をさせてもらう など
無理のない範囲で、日常生活に小さな「役割」や「つながり」をつくることが、回復につながることもあります。
ご家族のサポートも大切です
ご家族が疲れてしまうこともある
うつ病の方のそばにいるご家族も、とても大きなストレスを感じることがあります。
- なかなか良くならないことへの不安
- 「自分のせいかもしれない」という罪悪感
- 家庭内のすれ違いや、時には離婚の危機 など
けれども、ご家族がうつ病の原因というわけではありません。「待つこと」「寄り添うこと」が一番のサポートです。
ときにはご家族へのケアも必要です
どうしても気持ちが疲れてしまうときには、ご家族自身がカウンセリングやお薬のサポートを受けることも検討してみてください。
最後に:早めに気づくことが最大の予防です
うつ病の再発をふせぐために、もっとも効果的な方法の一つは「いつもと違うな」と思ったときにすぐ相談することです。
前回のサインを思い出しましょう
たとえば、前回のうつ症状がこんな始まり方だった方は
- 朝早く目が覚める
- 寝ても疲れが取れない
- 小さなことを必要以上に気にする
など、同じようなサインが出てきたら、すぐに医療機関に相談してください。できれば、前回診ていた主治医がベターです。
周囲の人の声かけがカギになることも
また、うつ状態では「どうしよう…」「決められない…」と迷ってしまい、医療機関に行けなくなることもあります。そんなときは、家族や友人、職場の人の一言が力になります。
「最近、またちょっと元気がないね。病院に行ってみたら?」
そのひと声が、再発を防ぐきっかけになるかもしれません。
ご相談ください
うつ病の治療は「終わったらおしまい」ではありません。治ったあとこそ、大切なケアの始まりです。
「また調子が悪くなったかも…」
「家族のことで悩んでいる…」
どんな小さなことでもかまいません。お気軽にご相談ください。
執筆:医学博士、精神科専門医
監修:メディカルクリニックルナ東京