はじめに
人と話すとき、視線が気になる。声が震える。
「また変に思われたんじゃないか」と後から思い返して落ち込む――。
誰にでも起こり得ることですが、こうした場面が日常生活に大きな支障を与えている場合、それは社交不安障害と呼ばれる状態かもしれません。
社交不安障害とは?
社交不安障害(Social Anxiety Disorder:SAD)は、不安症の一種で、人前で話す・見られる・注目される状況に対して、強い不安や恐怖を感じる状態です。
社交不安障害 症状は、特に人前での行動において顕著に現れます。
社交不安障害 症状は、個々の状況によって異なるため、具体的な症状を理解することが重要です。
この不安は「恥をかくのでは」「変に思われるのでは」といった自己評価への過度な意識が背景にあり、自然な緊張をはるかに超える強さで現れることが特徴です。
あがり症・対人恐怖症との違い
「あがり症」や「対人恐怖症」という言葉は日本では広く使われていますが、いずれも社交不安障害と類似した状態を指していると考えられます。
- あがり症:性格的な傾向として扱われがちですが、過度な緊張や回避行動がある場合は医療的な支援が必要になることも。
- 対人恐怖症:不安障害よりもっと広い意味で解釈される場合があります。専門家にご相談下さい。
症状のあらわれ方
精神面
- 見知らぬ人との会話への強い不安
- 否定的に評価されることへの恐れ
- 自分の緊張が他人に伝わることへの恥ずかしさ
身体面
- 声や手足のふるえ
- 赤面、発汗、動悸
- 吐き気やめまい
行動面
- 注目される場面を避ける
- 人と目を合わせない
- 声が小さくなる
- 社交場面を回避しがちになる
社交不安障害の原因と背景
社交不安障害は、脳の働きや性格傾向、環境要因など、さまざまな要素が関与すると考えられています。
- 家族に同様の症状がある
- からかわれた・笑われたなどの否定的な経験
- 慎重・引っ込み思案といった性格傾向
治療について
社交不安障害には、心理療法や薬物療法といった医学的アプローチがあります。
薬物療法
当院では、薬物療法をメインに治療を行います。
- 抗うつ薬や抗不安薬などが用いられることがあります(医師の判断が必要です)。
心理療法
心理士が在籍しているクリニックでは、認知行動療法等のカウンセリングを実施しています。薬物療法に消極的な方はお勧めです。
- 認知行動療法(CBT):不安のもとになる思考や行動パターンを見直し、行動の幅を広げていきます。
日常生活でできる対策
- 質の良い睡眠をとる
- カフェイン・アルコールを控える
- 適度な運動をする
- 信頼できる人に話す
受診を検討すべきタイミング
「人前に出ることを避けがち」「学校や職場に行くのがつらい」といった状態が続いている場合は、一度医療機関にご相談ください。
社交不安障害は、治療や支援によって改善が期待できる疾患です。
社交不安障害 症状は多岐にわたりますが、適切な治療を受けることで軽減可能です。
社交不安障害 症状には、精神面、身体面、行動面におけるさまざまな症状が含まれます。
まとめ
社交不安障害は、過剰な不安によって人との関わりが難しくなる状態ですが、「性格の問題」や「甘え」ではありません。
適切なサポートを受けることで、少しずつ自分らしいコミュニケーションを取り戻していくことが可能です。
お心当たりがある方は、一人で抱え込まず、どうぞお気軽にご相談ください。
執筆:医学博士/精神科専門医(日本精神神経学会認定)
監修:メディカルクリニックルナ東京